新大久保駅の事故に思う


 まず、この件を書くに当たって、内容に対し多々の批判があるかな?・・・って覚悟してますが、正直、元業界な人間としては、今回のこと、考えちゃう部分が多いので、やりとりは掲示板でできたらよりいい方向になるのかな?・・・って思っております。

 それだけはご理解いただけたら幸いです・・・

 そして、この件で、お亡くなりになったお二方の勇気に敬意を表し、ご冥福をお祈りしたいと思います。

 さる1月26日、夕方のラッシュ時間帯に、JR山手線 新大久保駅にて、酒に酔った1旅客(男性 50歳くらい)が誤って線路内に転落、それをみた2旅客が転落者を休出しようと線路内に入り、試みたが、列車接近中のために待避が間に合わず、ホームに侵入した列車に轢かれ、3人とも死亡した・・・という痛ましい事故が発生しました。

 テレビのニュースなどでは、彼らの勇気に対して賞賛をし、べた褒めされてたんですが、私ひとり、必ずしもそうでもネェぞ!! って思うモノがあるんですよ・・・

 今回の件、正確な場所などを見てないので、かなり憶測が混ざるため、コメントが適切かどうかは分かりません。

 まず、ホーム下に待避場所がない・・・これは、まず反対側のホームを見ると、大体対称にできてたりするのが多いので、反対側のホームがえぐれてなかったら、自分側のホームもえぐれてない・・・って判断するのが一つ、近くに橋梁の鉄骨が出ていた関係で反対側に逃げられなかった・・・というのも、コレは確認しないとコメントも適切じゃないんですが、ずいぶん端の方だったんじゃないの?・・・って思うに、少し電車側に逃げればW側(対向車側)に逃げられたんじゃないのかな?・・・って思うのが一つ・・・

 そして、列車が接近してる時点で、列車を見ぃ見ぃ動いて、もし無理そうだったら・・・転落者を諦めて、まず自分が助かるべき・・・というのが最終的な結論なんですよ・・・

 結局、最低な言い方してしまうと、今回の件、本来なら1人で済んだところを3人のヒトが亡くなってしまう・・・という悪い結論になってるんですね・・・

 それじゃ、お前はできるのかよ? って言う方々が大勢おいでのことと思いますが・・・私はできます!! プロだったから・・・

 プロなら当然なんですよ・・・この位の読みは・・・

 それができなかったら、車両故障の時に点検する際、場合によっては対向側で作業しなくてはならないことはいくらでもあります・・・その辺の注意を怠ってりゃ簡単にあの世のヒトですし・・・事故発生時だって、処置の際に油断してりゃ簡単に電車は線路内作業者をあの世に招待してくれるんです・・・

 緊急時だからこそ、カラダで仕込まれちゃったそう言う安全マージンがイヤでも働いちゃう・・・コレが「ポッポ屋の宿命」だったりもするんでしょうけどね・・・

 もし、私があの場にいたら・・・列車の大体の位置を読んで・・・数秒で入っちゃうな・・・って判断した場合、降りようとしただろうヒトは完全に止めます、そして、その近くから最大限離れさせる・・・コレをしてるでしょう・・・

 だって、やっちゃった瞬間が見えたり聞こえたりしたら・・・一生ショックですよ・・・運チャンだって、始めてやった人身事故、その場では上の理由でカラダは動きますが、我に帰ったあと3日くらいはまともにメシ食えなくなるっていわれるんです・・・一般の、全く覚悟ができてないヒトだったら、気絶しちゃうかも知れないですもんね・・・

 30秒くらいはありそうだな・・・って判断したら、やっぱり私が降りてたでしょう・・・そして、その際、非常ボタンを押させてたでしょう・・・あると言うことを知ってれば・・・

 もちろん、ヤバくなったら、その人見殺し・・・というのは気の毒な言い方ですが、私は安全な場所に逃げます。

 汚くも、まず自分が助かることが大事だと思うんですね・・・人命を省みない救助・・・あんなモノうまく決まれば国民的ヒーローですが、死んじゃえば、所詮ニュースのネタにしかならないんですね・・・

 鉄道には、「建築限界」ってのと「車両限界」ってのがあります、車両限界って、車体より、床下機器の部分の方が幅が狭いんです・・・もし、やばくなったら、対向側に逃げて、対向車が来そうだったら、伏せてれば死にゃあしないですし、最悪、スリムな方で手ぶらって条件(そう言う意味では私は最強に対象外)ですが、レールの間に思いっきり伏せてればその上を電車が通り過ぎてくれるんです・・・思いっきりガマン大会になりますけど・・・

 コレは、以前、自殺未遂で済んだ人身事故で、前例がありますので、間違いないです。

 まぁ、偉そうなハナシはこの位にして・・・

 この件で、ヒトのために尽くす・・・こういう心意気は、今の日本には失われつつあるもので、その見本をみせてくれた彼らには恐れ入るばかりなのですが、やっぱり、間違った勇気だったんじゃないのかな?・・・って懸念するのです。

 実際、このあと、2〜3件、転落した旅客を助けたヒトのハナシがありました。

 どっちもいい条件で、列車到着までの時間がわずかでも余裕があったり、長い直線でのハプニングだったりしたので支障箇所外方(手前)に停止できてたりして、いい結論だったのですが、コレ、タイミングや場所が悪かったら、同じパターンぢぇん・・・って思うと、私は誉められないんですよ。

 実際、JR東日本も、お客様の勇気はたたえてると思いますが、線路内に降りちゃったコトに関しては「やめて欲しい」って訴えてるはずですし、運転経験者な私としても、降りるべきではない・・・と訴えたい所です。

 もし、どうしようもなく、降りなくちゃならない・・・って局面になった場合、私の経験でチェックして貰いたいのは・・・

・ホームの裏側に待避できるスペースがあるか?

・ホームの全長に対して前の方なのか後ろの方なのか? 要は列車の停止位置近くだったら・・・手前の方で運チャンに停止させるようなジェスチャーをすれば、無理なく外方に停止できますし、目一杯後ろなら、対向側に逃げれば大丈夫ってコトもあります、今回の山手線、通過列車がないって前提条件で考えると、対向車側に逃げれば、対向車の運転士、気づけば非常ブレーキを手配しますから待避した地点の外方に停止できるだろうって読みなんですね。

・列車接近に関して、どのくらい時間ありそうなのか? チェックするポイントは、都市部の場合、列車到着のチャイムが鳴ってたら・・・すぐに電車が来ちゃうってのは当然ですが、チャイムが鳴ってからどのくらいかで判断して、あと、レールの音を聞いて欲しいんです・・・列車が近ければ「コ〜〜〜〜ッ」って音が響いてると思うんですね・・・丁度、引き戸がレールの上を走ってるかのような・・・
 そしたら・・・私でも諦めます。もちろん、カミさんとか、子供、親とかだったらハナシも変わりますけど・・・って、カミさんはいませんけどね・・・

・もし、降りられるとして、降りたら、ドコに待避しよう?・・・ってポイントは必ず押さえること・・・コレができそうになかったら・・・身内がヤバイって条件じゃない限り、諦めるのも大事なんですよ・・・「勇気ある撤退」って言葉で言ってしまうと哀しいですが、そんなもんなんです。

 この事故の教訓として、鉄道会社も、ホーム転落検知装置を多く採用するとか、ホーム裏側に最大限待避できるスペースを確保するとか、本格的な対策がなされようとしております。

 実は、鉄道屋も、なんだかんだで景気はよくないので、経費は抑えたいんでしょうが、必要に迫られましたので大手やJRは急速に進むことと思います。

 何かあったとき、助かる可能性が向上すると言う面で、いい傾向だと思っておりますが、危険を顧みずにホームに降りて人助け・・・悪いこととまでは言いませんが、必ずしも良いこととは言いにくいので、マジ、上のポイントとか、いかに安全を確保するか?・・・コレを考えてから策に出てくださいね。

 久々にポッポ屋時代の熱い血を思い出させて貰った事件だったと思っております・・・