Episode 3
「強盗に遭遇」
99年3月某日
アメリカのショッピングマーケットは日本とは比べ物にならないくらいデカイ。
横浜そごうB1の食品街くらいの大きさが一般のマーケットの広さ。
24時間営業がほとんどで生活必需品なら何でも揃うのがうれしい。
いつもは学校帰りに夕飯の食材を買いにいくのだが、その日はなぜか夜10時を
まわっていた。べつに危険な地域でもなければこの時間に買い物へいくのは
珍しい事ではない。ごく普通のこと。
いつものようにカートを押しながら買い物をする。まばらではあるが、
客もそれなりにいる。いつもの光景だ。
自分の買い物もそろそろ終わりに差し掛かったころ、レジのほうが騒がしい。
おまたせ!事件です。
その日レジは10個ある内の2つが空いていた。なにやらレジの方が騒がしい。
ほとんどの客は気付かない様子だったのだが(へんな人多いからね)
一人の客が叫んだ。「強盗だ!」
俺は結構出口の近くにいたのだが、客という客が俺の方めがけて突進してくる!
まるで津波から逃げる海水浴客のようだ。あわてて俺も出口めがけて走る!
しかし!強盗は出口の近くのレジにいた!
強盗は映画でお馴染みの黒い覆面をかぶり、店員は硬直している。
俺と客は急ブレーキ!一目散に方向を変えた。あたりまえだがみんなスゲー顔してる!
中にはマンガのように転げ回るおっさんもいるしまつ。でも笑ってられないし、助ける気にもならない。我が身かわいや!
逃げまとう俺は一つ疑問に思うことがあった。
「俺こんなに足遅かったっけ?」
俺はばぁさんに追い抜かれて始めて気が付いた事が!
「なんでカート押してんねん!」
そう!俺は無我夢中のため何ガロンも水の入ったカートを延々押して逃げていたのだ!
「いるか!こんなもん!」とばかりにカートを捨てる!
横にいたオネーチャンもそれを見てカートを捨てる!(お前もか!)
そのカートにオヤジがつまずく!
いや、これ冗談抜きでそのくらい皆必死なのだ!
ほとんどのマーケットは夜9時を過ぎると出入り口が一ケ所のみとなる。
気が付くと40人近い客と店員が強盗のいるレジに一番遠い場所に集結していた。
ここに人種差別も男女差別もヘッタクレもない。
「みんな落ち着け!」と威張っているオヤジは人垣の一番奥だ。
みんな必死に人垣の奥へ奥へ入り込もうとしている。
オカーチャンなんか子供の首根っこつかんで大騒ぎ!オネーチャンはパンツまるだし!
ガキは泣く!すいかは割れる!がたいのいいオニーチャンは神に祈ってる!
ホントに修羅場だった。
その後5分くらい経ってからだろうか、陳列棚の影から人陰が・・・
「ギャース!」
全員発狂! しかしそれは店員だった。
「強盗はもういません。ただいま警察を呼んでおります。しばらくそのままで・・」
みたいな事を告げられると・・・一同大爆笑!
「俺転んじまったよ〜」「いや〜まいったね」などと話しはじめる。
俺の隣にいたオネーチャンは商品のジュースを飲みはじめた。(俺もいただいた)
みんな結構なれてんの?とバカな質問をしたところ、
「俺2度目」なんて人もいて、もう和気あいあい!
3分もしないうちに警察がやってきて客全員に質問開始。
犯人の特長は?身長は?肌の色は?目の色は?などなど・・・
わかるか!アホ!こっちは必死だったっての!
しかしそんなかんやで やっと解放されたのは夜中12時30分!
外にでるとこれまたビックリ!
テレビのレポーターとカメラがわんさかいる。
そこから疲れてるってのに質問攻め・・・家に帰ったのは1時・・・
本当に疲れた・・・・
翌日学校をわざと休み、朝一でビデオテープと新聞を買いに行き、
テレビの前でリモコンのRECボタンに指を置き、1日中ニュースを見ていた。
新聞には小さい記事で写真は載っておらず、テレビなんぞ触れてもいなかった。
新聞の切り抜きだけが寂しく手元に置いてあります・・・・